科学研究費補助金・新学術領域研究(新ハドロン)・公募研究

高輝度γ線と大立体角検出器を用いたペンタクォークバリオンの研究

研究代表者:新山 雅之(京都大学理学研究科)

課題番号:22105515(平成22年度〜23年度)

研究の目的・概要

 本研究では SPring-8 逆コンプトンγ線ビームラインからの高輝度γ線を用いて、5つのクォークで構成されるエキゾチックバリオン(ペンタクォークバリオン)の測定を行うことが目的である。エキゾチックバリオン候補であるΘ+粒子やΛ(1405) 粒子の崩壊で生じる粒子を検出するための荷電粒子検出器の開発を行う。


平成22年度:研究の進捗と成果

 荷電粒子検出器として Time Projection Chamber (TPC) の基本性能の試験を行っている。150μm の位置分解能を達成するために、信号読み出し部分についてガス電子増幅器(GEM)読み出しとマルチワイヤー読み出しとの比較を行っている。GEM を用いると高い位置分解能が得られるが、細かいパッド構造を用いるためチャンネル数が膨大になる。そのため、GEM で増幅した電子を高抵抗面を通して誘起電荷を読み出す試験を行っている。また、マルチワイヤー読み出しでもパッド・ワイヤー間のギャップを2mmまで狭める事で位置分解能を向上させるための試験を行っている。図1にマルチワイヤー読み出しを用いた時の宇宙線の Tracking Residuals 分布を示す。粒子とパッドの間の角度が 0度近辺では目標分解能を達成できてきることが分かった。現在、角度依存性や読み出し回路の最適化を行っている。また、GEM を用いた読み出しの性能評価も行っており、基本性能を比較して TPC のプロトタイプの作成を行う。

residual.jpg

1宇宙線イベントでの Tracking Residuals 分布。