2002年度P3トップへ  2002年度P3理論ゼミへ  最終更新日:2003年 3月19日 水曜日

2002年度P3実験ゼミ

日時:火曜日14:00〜
担当:今井さん  舟橋さん
テキスト:粒子物理計測学入門 福井崇時
 (共立出版, 1992, ISBN:4320030516)

目次
前期
月日 本読み やりたい実験について
発表者 範囲 発表者 テーマ
4月15日 中津川 2.1 全員 どんな実験をやりたいか?
4月23日 中津川 2.1  
廣岡 2.2
4月30日 廣岡 2.2
早田 2.3
5月 7日   全員 やりたい実験について調べてきたこと、次週までにやってくること
5月14日 久保田 3.1 庄司 電子散乱による形状因子の測定
素粒子・原子核物理入門(シュプリンガー)第5章
大佐賀 6Heのハロー構造
nucl-ex/0004001 Phys.Lett. B518, 27 (2001)
5月21日   中津川 原子核のクラスター構造
原子核構造論(朝倉書店)
織田 β崩壊における時間反転対称性の破れの検証
Phys. Rev. Lett. 52, 337 (1984). Phys. Rev. C53, 932 (1996)
廣岡 ニュートリノ散乱による構造関数の測定
素粒子・原子核物理入門(シュプリンガー)8.1
早田 surface muon beamを用いたνμ質量の計測
Phys. Rev. D 53, 6065 (1996)
5月28日 久保田 3.1 渡邊 高エネルギーpp衝突におけるπ0中間子の観測によって核子のクォーク構造を見る
Phys. Lett. 46B, 471 (1973)
6月 4日 久保田 3.1  
6月11日   久保田 中性子吸収反応における時間反転の検証
Phys. Lett B172, 5(1986). Nucl. Instr. and Meth. A366, 115(1995)
中津川 原子核のクラスター構造
6月25日 渡邊 3.2  
7月 2日 庄司 4.1 中津川 16Oのαクラスター構造(12C+α→8Be+8Be)
Phys. Rev. 160, 827 (1967)
織田 19Neのβ崩壊における時間反転対称性の検証
Phys. Rev. 184, 1117 (1969)
7月 9日 大佐賀 4.2  
織田 4.3
7月16日   廣岡 原子核のエネルギー準位の測定(55Mn(p,α)52Cr, 52Cr(p,p')52Cr*)
全員 前期に出た実験案の絞り込み


2002年度のP3メンバーから出された実験案  2002年 7月16日検討
提案者 テーマ 実験場所 実現
可能性
内容 第1
希望
第2
希望
早田 π中間子を用いたνμ質量の測定 KEK   1人 0人
中津川 αクラスター タンデム   5人 3人
廣岡 原子核のエネルギー準位 タンデム  
織田 19Neのβ崩壊における時間反転対称性の検証 タンデム 崩壊の遷移確率のうちの、時間
反転に負の変換をするJpe×pν
の比例係数Dを測定し、
時間反転の破れを探索する。
(課題:偏極方法の検討)
2人 3人
庄司 ep散乱による陽子の大きさの測定 化研   0人 2人
久保田 T反転対称性の検証(中性子吸収反応) 原研? ×    
渡邊 pp散乱によるクォーク構造の確認 BNL? ×  
大佐賀 不安定核(6Heのハロー) 理研? ×  


実験内容および目的 2002年10月15日決定
グループ 実験内容および目的
αクラスター構造 12C+α→16O→8Be+8Be→4αなどの反応において放出されるαを検出することにより、
16Oの励起状態の慣性モーメントを求め、その形状について考察する。
それにより、クラスター模型についての理解を深める。
19Neの偏極 京大のタンデム加速器において、19F(p,n)19Ne反応で作った19Neを
四重極磁石の磁場勾配で偏極させる(Stern-Gerlach法)。
偏極19Neを用いて時間反転対称性の破れの探索ができる。


後期
月日 やる実験について
発表者 テーマ
 9月17日   今後の予定
グループ分け
αクラスター:(大佐賀、庄司、中津川、廣岡、渡邊)
19Ne:(織田、久保田、早田)
10月 1日 19Ne 実験内容(タンデム加速器において、19F(p, n)19Ne反応で作った19Neを四重極磁石で偏極させる)
19Neの生成量、偏極度の測定、四重極磁石による偏極(Stern-Gerlach法)
αクラスター Phys. Rev. 160, 827 (1967). Breakup of O16 into Be8+Be8
10月 8日 全員 工場実習(ボール盤、帯のこ、ポンチ、タップ)
10月15日 19Ne CF2粉末標的、19Neの生成量(Nucl. Phys. A115 (1968) 120)、四重極磁石による分離
貯蔵リングと四重極磁石を用いた核の偏極
αクラスター O16のクラスター構造(目的、実験内容、解析)
10月22日 αクラスター 2d+14N→16O, 12C+4α→16OのQ値の検証
半導体検出器(pn接合、逆バイアス電圧、SSD)
19Ne ビームの速度分布、シミュレーションの結果の確認
10月29日 αクラスター 4α+12C→16O以外の反応のQ値の検証
p+15N→16O、 2H+14N→16O、3He+13C→16O、 6Li+10B→16O
ストリッピング反応 14N(6Li, α)16O*12C(7Li, t)16O*
19Ne スリットから出て行く粒子数、磁石に入る粒子数、偏極度測定に使える数
11月 5日 αクラスター 16O*の励起エネルギーとαの観測エネルギー(14N(6Li,α)16O*)
19Ne 偏極分解能A
11月12日 19Ne jπ=1/2+の粒子とjπ=0+の粒子との反応で引き起こされる偏極
(密度行列、スピン行列、反応の際に引き起こされる偏極)
四重極磁石による19Neの偏極のシミュレーション、減偏極について
αクラスター 液体窒素をターゲットに用いる場合の窓について
ターゲットに用いる窒化物の候補、ターゲット中をα、8Be、16Oが進む距離
detectorの配置について
11月19日 αクラスター スパッタリングによるTaN2薄膜の作成
Nucl. Instr. and Meth. 107 (1973) 233
19Ne 偏極水素原子ガスの壁との衝突による減偏極(Nucl. Instr. and Meth. A349, 321 (1994))、
得られる偏極19Ne原子と実験装置の設計
11月26日 αクラスター 12C(6Li,α)14Nの断面積から14N(6Li,α)16Oによって生成される16Oの生成量を見積もる。
Phys. Rev. Lett. 31, 255 (1973)
19Ne 四重極磁石中の真空度、実験装置の配置、スリットの形状、
崩壊数、実験装置の設計
12月 3日 αクラスター 14N(6Li,α)16Oによって生成される16Oの生成量の見積りと、
検出器(SiPINフォトダイオード(Trigger, Detector))の配置
19Ne マイラーとプラスチックシンチレータを通過する際の陽電子の電離損失、予備実験について
貯蔵容器の接続部の設計について
四重極磁石を固定する管の設計について
source cavity の設計について
12月10日 19Ne 貯蔵容器の設計について、予備実験について
source cavity の設計について
四重極磁石を固定する管の設計について
αクラスター 粒子識別について 500 μmのSi検出器
・トリガーのα用(ビームに対して65度以下に配置する)
・Be→2α用(Beのmassを組む)
12月17日 19Ne 陽電子のスペクトル、Ne原子の表面での吸着
実験装置について
αクラスター 本実験〔N(Li,α)O〕においてリチウムが弾性散乱する際の角度とエネルギー
予備実験〔C(Li,d)O〕においてリチウムが弾性散乱する際の角度とエネルギー
運動学について
TaN2標的について
12月24日 19Ne 銅とアクリル樹脂の熱膨張率
19Neの邪魔になる生成核(15O)
αクラスター α線源(Am)によるSiPINフォトダイオードの試験
 1月14日 αクラスター 予備実験:N(Li, α)Oにおける角分布の測定(エネルギー分解能が問題になる)
19Ne スリット3について、データ解析の際の補正(geometry factor, backscattering correction)について
 1月21日 19Ne PTFE粉末の密度、雪崩について
全員 予備実験について(予備実験でやること、予備実験までにやること)
 1月28日 αクラスター 予備実験の結果について
19Ne 予備実験の結果について
 2月 4日 αクラスター 弾性散乱したLi、α線源(241Am)を用いたdetectorの較正
 2月12日 19Ne 2回目の予備実験について
 2月17日   本実験について
 2月25日 αクラスター 実験報告
19Ne 実験報告
 3月 4日 19Ne データ解析について
αクラスター データ解析について
 3月11日 αクラスター deuteronのピークについて、Si-detectorの不感領域について、レポートについて
19Ne レポートについて
 3月17日 αクラスター ピークの特定について


予備実験
月日 実験目的
1月23、24日 19Ne(1回目)
(大佐賀、織田、久保田、早田)
テフロン(PTFE)粉末標的から19Neが
どの程度(絶対数)出てくるかを調べる。
1月24、25日 αクラスター
(庄司、中津川、廣岡、渡邊)
12C(6Li,d)16Oという反応でできる16Oの17.197 MeV
の励起準位を見て、角度分布を測定する。
2月12日 19Ne(2回目) テフロン(PTFE)粉末標的から19Neが
どの程度(絶対数)出てくるかを調べる。


本実験
月日 実験目的
2月18、19、22、23日 19Ne 19Neを偏極させ、それを確認する。
2月19、20、21、22日 αクラスター 12C(6Li,d)16Oという反応でできる
16Oの17.197, 18.016, 19.319 MeV
の励起準位を見て、角度分布を測定する。


実験報告 2003年 2月25日提出

αクラスター班
12C(6Li,d)16O* ,16O*8Be+8Be , 8Be→α+α 散乱による16O*のαクラスター構造の検証」
I.実験のねらい
16O*8Be+8Be 散乱の角分布を測定して16O*の角運動量を求めることにより、16O*の慣性モーメントを求めてα粒子の鎖状構造を確かめる。
II.装置と回路(省略)
III.測定の説明
trigger detector,2-pair detectorでtriple coincidenceを取り、trigger detectorではdを、2-pair detectorではαを検出する。triggerの角度は固定。triggerが検出するエネルギー(16O*の準位に対応)を決めたとき、2-pairの角度を変えながら8Beのmassを組み、16O*8Be+8Beの角分布を取る。triggerが検出するエネルギーを変えて、すなわち16O*の準位ごとに同じ測定を行う。
calibrationには12C(6Li,6Li)12Cの弾性散乱を利用する。triggerと2-pairの片方とでdouble coincidenceを取り、6Liと12Cのピークを見る。
IV.結果
実際には8Beのmassを組むところまでもできず、calibrationまでしかできなかった。その結果は、channelをX[ch]、エネルギーをY[MeV]として、
trigger :Y=0.017X-0.20
2-pair up :Y=0.021X+0.54
2-pair down :Y=0.025X-0.13
今後の方針としては弾性散乱のほかに見えていたピークが持つ物理的意味について考察することなどが考えられる。

19Ne班
■課題:19Neの粉末テフロン標的からの放出と貯蔵
■実験のねらい:
・予備実験では、
粉末テフロン(PTFE, -CF2-)標的に12 MeVの陽子ビームを入射し、19F(p, n)19Ne反応で生成される19Neが標的外へ放出されることを19Neのβ+崩壊で放出される陽電子をプラスチックシンチレータで検出することによって確認し、
・本実験では、
10 MeVの陽子ビームにより生成された19Neをスリットを通すことによって特定の方向に一定の距離(0.54 m)離れた容器内に貯蔵し得ることを予備実験と同じ方法で確認する。
■実験装置と回路:
・予備実験 図1(省略)
・本実験 図2(省略)
・測定回路 図3(省略)
■測定方法:12 MeVの陽子をテフロン(-CF2-)に入射したとき、生成されるβ崩壊する核種は19Ne(τ1/2=17.34 秒)、15O(τ1/2=122.24 秒)、13N(τ1/2=9.965 分)、17F(τ1/2=64.49 秒)の4種に限られ、その半減期から核種を決定できる。
ビームを出しているときにはγ線のバックグラウンドが多いので、ビームを止めてからのプラスチックシンチレータの検出数の変化をscalerで記録し、半減期を求め、それより19Neがそこに存在することを確認する。
β+崩壊の陽電子が標的から直接到達できない位置にシンチレーターを配置すれば、19Neが粉末標的外に放出され、真空中を移動することを確認できる。
■結論:
図1の配置の予備実験では、19Neが標的外へ放出されることが確認された(図4(省略))。
図2の配置の本実験では、19Neがスリット1、スリット3を通って貯蔵容器に貯蔵されることが確認された(図5(省略))。寿命が短くなっているのはスリット3を再び通り、外へ出て行く影響による。
■展望:
図2の配置で、スリット1、スリット3の間に磁場勾配を持つ磁石(例えば四重極磁石)を設置すれば、19Neを偏極させることができる。(そのことを確認するのが本実験の当初の目標であった。)
さらに、偏極19Neのβ+崩壊で放出される陽電子と、反跳19F-19Neの偏極方向の三重の角度相関を求めれば、時間反転対称性の検証ができる。

合同発表会
日時 発表者
3月18日13:00〜 P319Ne班 + P4
3月24日 9:30〜 P3αクラスター班 + P1


粒子がどのくらいの距離で止まるかを調べるには