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トランジスターの増幅作用の簡単な説明

まずは、半導体の基礎から。 IV属の原子、シリコンやゲルマニュームは最外殻原子が4つでこれが回りの4つの原 子と 電子を共有して共有結合を形成し安定になる(これは有名な話)。これを真性半導体 とよんでます。 これにIII属(燐や砒素)の不純物をまぜると電子が不足して空孔をもつp型半導 体、V属の不純物 (ホウ素やインジウム)をまぜると余剰電子が混ざってn型半導体になります。 このままでは単なる抵抗でしかありませんが、これを(結晶状態をきれめなく)くっ つけると pn接合を形成し、電子デバイスとして役に立つものになります。 (pn接合に形成方法はいろいろありますが、一番分かりやすいのが拡散法で、たと えば n型半導体にホウ素を打ちこみ、熱をかけ拡散させp型領域を形成するという方法で す。)

pn接合が形成されると空孔と電子が結合して余剰電荷がゼロになる領域ができま す。 これを空乏層といって半導体の動作のために非常に重要な概念です。 p側に+、n側に−をかけると(順方向バイアス)、0.6V程度で空乏層が消滅し電流 が流れます。 逆方向バイアスをかけると空乏層はどんどん広がります。

 
Figure: トランジスターのよくある説明図(左)と実際に近い説明図(右)
\begin{figure}
\epsfxsize=0.4\textwidth
\centerline{\epsffile{EBC.ps}}\end{figure}

ここで実際のトランジスターを考えます。内部構造は典型的なプレーナ型で図のよう になって いて、典型的な厚みはコレクタ250μm、ベース10μm、エミッタ5μmぐらいなの で、 実態を反映させたトランジスター模式図はよくある説明図とはかなり違うものです。 実際の動作では、ベース・エミッタ間では順方向バイアスがががりますから、空乏層 は消失していますが、ベース・コレクタ間には空乏層があります。ここでnpn型の トランジスターを考えてみます。エミッタからの電子はベースの空孔と結合して 消失しますが、ベースが薄いために一部コレクタ側に飛びこみます。コレクタ領域 の空乏層にはいれば逆バイアスを受け、一気にコレクタ電極へ流れるわけです。 よってこの現象を起こりやすくするために、ベースは数μ〜数十μmの薄さにし、 エミッタ領域の余剰電子の密度をベースの空孔密度より100倍程度多くするという 「技」を使います。 これで、コレクタに電流が流れるためにはベース電流が流れることが必要であること が わかります。ベース電流の大小でコレクタ電流をコントロールできるであろうことも 想像できると思います。これがトランジスターの電流増幅機能です。 実際にはエミッタの余剰電子数は 1020/cm3, , ベースで空孔数が 1018/cm3、コレクタで 1016/cm3ぐらいにするようで す。 コレクタ領域の電子数密度を下げるのは、コレクタの電子とベースの空孔が結びつく レートを下げる(逆注入という)、ベース・コレクタ間の逆バイアスでできる空乏層 を大きくし、耐圧を上げる(すなわち動作範囲が広がる)ためです。

ベース電流とコレクタ電流の比をhFE(エイチエフイー)とよびます。これは 直流電流増幅率で、トランジスタの性能でもっとも重要なものです。 ものによりいろいろありますが一声100ぐらいだと思っておいてください。 これと同様にhfeというのがあって交流増幅率です。低周波では hFE=hfeだと思って問題ありませんが、高周波ではかなり異なるものになるので 両者は区別されることが多いです。

トランジスタのエミッタ・コレクタを逆につなぐと、一応動作しないわけでは ありませんが、ベース電流が増え、hFEも極端に小さくなり、耐圧も低くなりま す。

あと、FETというものがありました。これは、図のようにゲートにかける電圧で 空乏層の幅をコントロールしてドレイン電流を変化させるものです。FETの特性は 真空管によく似ていて、トランジスターとは異なり、電圧増幅素子と呼ばれていま す。

 
Figure: FETよくある説明図
\begin{figure}
\epsfxsize=0.3\textwidth
\centerline{\epsffile{SDG.ps}}\end{figure}


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2000-02-20