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最後に、一応講義なので、あまりにも当たり前なため説明しなかった回路を解く上で
の法則をまとめておきます。
- インピーダンスの実部はレジスタンス(抵抗)R、虚数部をリアクタンスXと
よぶ。リアクタンスが正のときはコイル的で誘導性リアクタンスと呼び、負のときは
容量性リアクタンスとよびます。
- インピーダンスの逆数をアドミッタンスYとよび、実部をコンダクタンス
G、虚部をサセプタンスBとよびます(覚えなくてもよい)。
- オームの法則:
V(t)=I(t)R(t)、
V(w)=I(w)Z(w)
- キルヒホッフ第1法則:電気回路のいずれの節点にいても電流のベクトル和は
ゼロになる(電流の保存)
- キルヒホッフ第2法則:閉回路上の電位の総和(ベクトル和)はゼロになる
(エネルギーの保存)
以上のものだけで 並列回路の抵抗
1/R=1/R1+1/R2みたいな公式は全部導ける
わけです。
- 重ねあわせの定理:複数の起電力がある線形回路網の電圧、電流は、複数の
電圧源、電流源がおのおの1つずつ在ったとして、他の電圧源を短絡、電流源を開放
して解いたものを重ね合わせればよい。
これは「線形」の定義みたいな物ですから、物理の学生には当たり前です。
ただし、電流源についてちょっと説明しておきます。定電流電源は例えば一定に安定
した磁場を得たい時に使います。コイルの温度が変わって抵抗値が変わっても磁
場が一定になるようにするなら電圧を一定にするより、電流を一定にしたほうがよい
わけです。このような電流源に外から別の電圧を加えても、電流は変わりません。この
ことは定電流電源が等価的に内部抵抗が無限大なことに相当します。反対に定電圧
電源は負荷によって電圧が変わらないわけですから、内部抵抗がゼロであると言え
ます。
- テブナンの定理:ある回路網の出力を外からみたときの開放電圧がV、
インピーダンスZ0のとき、そこにZの負荷をつなぐと
I=V/(Z0+Z)の電流が流れる。
- ノートンの定理:ある回路網の出力を外からみたときの短絡電流がI、
内部の電源をすべて取り除いた時の外からみたインピーダンスがZ0のと
き、そこにZの負荷をつなぐと出力端子には
V=I/(1/Z0+1/Z)の電圧が現れる
ノートンの定理は普通はアドミッタンス(Zの逆数)で書きます(
V=I/(1/Y0+Y))。
これら2つの定理は双対な関係にあるわけです。それぞれ等価電圧源の定理、
等価電流源の定理
ともいいます。
以上、あたりまえのことばかりなのですが、この辺が感覚的に分かるかどうかが、回
路の理解に通じるわけです。以下の等価回路を見てください。
Figure:
等価電圧源と等価電流源。Y0=1/_0なら両者は等価である
|
左側は内部抵抗Z0の電圧源、右は内部アドミッタンスY0の電流源
です。もしZ0=1/Y0で
I0=V0/Z0なら、2つの等価回路はまったく等価になり
ます。
ノートンの定理を右図に使うと短絡電流はI0で、
V=I0/(1/Z0+1/Z)=V0Z/(Z+Z0) となり
I=V0/(Z+Z0)、と左の絵のテブナンの定理になります。ポイントは
この2つの絵が等価に見えるようになる「感覚」です。電源を電流源で置き換えたほ
うが考えやすいことがよくあります。
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2000-02-20