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世の中のブラックボックスたち (交直流回路の概論をかねて)

ここから世の中でよくみる、電話とかラジオとかの仕組みを明らかにしたいのですが ちょっとは準備も要ります。 その前に、交流回路の基礎知識をまとめておきます。時間積分が無限大にならない すべての波形は周波数に分解してフーリエ変換できるという事実さえ分かっていれば 簡単なはなしです。

まず質問。  部屋の電気コンセントからは正弦波の交流電圧がとれます。正弦波だから山と谷が ありますがその電圧差は何ボルトでしょうか? 又、周波数はいくつですか。

さすがにこれが分かってない人はいないと期待したいです。答えは282Vで60Hz (関西)です。 ちなみにこの周波数は発電タービンの速度で決まっていて、周波数はさほど安定して いないのですが、長期的な平均周波数が60Hzになるように発電所で調整しますので、 この周波数を利用した時計は結構あります。月差で数分になるはずです。この安定度は 結構大した物で、10-4の安定度ということになります。 さて山谷の間が282Vなのに100Vというのは、普通交流は実効値であらわすからで す。実行値は自乗平均であらわし、

\begin{displaymath}V= \frac{1}{T}\int^T_0{v^2(t)}dt
\end{displaymath}

で定義されます。v(t)を瞬時値、Vを実効値とよびます。 $v(t)=v_{max}\sin(\omega t)$と書けるので正弦波の場合実効値は $v_{max}/\sqrt{2}$になるわけです。vmaxを尖頭値 とよびます。 だからダイオードブリッジ整流回路をコンセントに 直づけにすると141Vの直流電圧が得られます。整流した後の交流成分の山と谷の電 圧差を直流成分の平均値でわったものをリップル率と呼んで電源の性能の一番重要な目安 に成ります。 したがってブリッジ整流のあとコンデンサーをつけなかったらリップル率はほぼ100%になります。 コンデンサーをつけて、平滑してやると、負荷抵抗がおおきいときはリップル率が0です。 リップルは安物のラジカセでカセットをとめてボリュームを最大にしてやると大抵ブーンと 聞こえたりします。これをハムと呼んでいて、雑音のうちもっとも基本的なものです。 (ホンとのことをいうと、整流したあとの交流成分は120Hzで、よく聞こえるのは60Hz ですが…)。

ついでに蛇足ですが、100Vの電灯線のうち、触ってしびれるのはどっちか知っていますか? 一度試してください。これは電信柱の上で送電線を家庭用100Vに落とすトランスは片側を 地面に接地してあるからです。このため、ぼろい洗濯機などでしびれたときはまず、コンセント をひっくり返すとOKになることが多いのは知っててよい知識です。ぼろい洗濯機はモーターの 巻き線で漏電が起こることがありこの漏電しているほうを地面の電位に近づけてやることで 漏電をとめられる(洗濯機の電位が回りの電位と近づく)わけです(正しくは買い換える、 貧乏だったらアースをチャンと取ることが大切ですが)。 この事実は結構高級な ステレオアンプなどでも有効な知識です。たとえばアンプとチューナーをつなぐときコンセント をひっくり返してつなぐと音がよくなることがあります。 これは各々の機器の中のトランスに電線を巻くときに内側ほうに巻いた電線からトラ ンスに微弱な漏電がおこり機器の筐体の電位を変動させるからです。このために信号ケーブ ルに筐体間の電位差による電流が流れてノイズが乗ってしまうためです。すべての機器の コンセントの差し方の順列組み合わせで一番よいものを探す人たちのことをオーディオマニアと 呼んでいます。

あと、嫁さん(原子核理論)と話していて気づいたのですが、わりと知られていないの かもしれない事があります。扇風機のコンセントを引っくり返して差しても扇風機が 逆に回らないのはナゼが知っていますか? まーこれは宿題。



 
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2000-02-20