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差動増幅、原理と実際


 
Figure: 差動増幅回路(左)と理解のための回路図(右)
\begin{figure}
\epsfxsize=0.6\textwidth
\centerline{\epsffile{CMMR.ps}}\end{figure}

さて差動増幅のの基礎回路は図a)のようなものですが、これを ちょっと分解してみます(図b)。 これは左側のトランジスタはエミッタフォロワー、右側はベース接地 のように働いているように見えます。ここでエミッタの内部抵抗reを 外に書いたわけです。Q1のエミッタ電流が増えた分Q2のエミッタ電流 が減るように働きますから実用上Q1のエミッタ電流の増分はそのまま Q2のエミッタ電流の減少になります。Q2はベース接地的に動作しますから 電圧利得はQ2で RL/(2re)、Q1でほぼ1です。Q1のコレクタ側は それと逆相で -RL/(2re)になり、結局差動利得はRL/(re)です。 ここで重要なのはゲインがReによらないことです。

ここで同相利得を考えてみます。差動増幅との名乗る限りこれはゼロで あって欲しいものです。Re>>reとすると ic=vin/2Reですから vout1=vout2=-vinRL/2Reとなり、同相利得は RL/Reになります。従ってReを大きくすることが重要です。

実際の差動増幅の性能はコモンモード除去比(CMRR)で表されるます。 これは差動利得/同相利得で定義されおおきければ大きいほどよいわけです。 結局のところ CMRR=2Re/reですのでReを大きくすることに帰着します。 (reはデバイスで決まってしまう。) すなわち定電流源で置き換えればよいわけ です。

差動増幅器の重要性は、信号を長い距離送りたいときを考えると良く分かります。 早い信号を線でつないで送るときは一般に同軸ケーブルとか ツイステッドペアケーブルとかを 使います(早いという意味は信号の波長が電送ラインの長さにたいして十分短い ということです)。 遠くへ送るときには一般に両方の端の地面(グランドレベル) の電位は違っています。その辺に大電力を食う機械などがあることを想像してください。 そのとき同軸ケーブルでつなぐと外皮に電流が流れますこれはそのまま増幅されて しまってノイズだらけになってしまいます。 こういうときは差動出力の機械を 用意してツイステッドペアケーブルなどを使って送り出します。グラウンドレベルの差は 対称なので両方の導体を同じように流れて同相のノイズとなりますが送り出したかった 信号は逆相ではいっているので、CMRRの高い差動増幅器で受けてやると信号だけを 取り出せるわけです。 もっと完璧にやるときはツイステッドペアケーブルに 外皮を巻いてそれで両者のグランドをつなぎ、信号線にはノイズ分がのらないような 工夫をします。こうするとツイステッドペアケーブルが同軸に比べて劣っていた シールド性能も得ることが出来、一挙両得です。


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2000-02-20