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電力増幅、プッシュプル回路


 
Figure: プッシュプル回路。原理図(左)、ダイオードでクロスオーバー歪みを逃げるやり方(中)、 定電圧源で自由にバイアスを変化させる回路(右)
\begin{figure}
\epsfxsize=0.8\textwidth
\centerline{\epsffile{pushpull.ps}}\end{figure}

さてトランジスタの動作点のとりかたとして、今までは信号を全体を 増幅できるものを考えてきました。これはA級動作と言って基本的なものですが これ以外にB級C級AB級というものがあります。B級というのは動作点をずらし 信号の片側のみ増幅するようなものです。C級というのはもっと過激に信号の 頭だけ増幅するようなもので、AB級というのはAとBの中間的なものです。

A級の最大の欠点は無負荷時にもコレクタ電流をながしているので 電力消費が大きいということです。従って電力を多く食うところに向かない 回路になります。この欠点を補うために生まれたのがB級push-pull回路です。

基本的回路は図a)のようなもので入力が性の方に振れると上側が、負の方に振れると 下側のトランジスタが動作領域に入ります。入力信号がないときにはどちらも OFFですので電力消費はありません。これを純コンプリメンタリB級プッシュプル 回路とよびます。

この回路のままだと$\pm0.6$Vまではどちらのトランジスターも動作しないので 出力に歪みが出ます。これをクロスオーバ歪みとよびます。これを避けるために 図b)のような電圧シフト(バイアス電圧) を与えてやって入力電圧がないときでも少しばかり コレクタ電流が流れるようにしてやります。このような回路の事を 電圧シフト回路とよびます。実際にはここの電圧を調整し適当な正負の動作領域が 重なるような状況を作るわけです。したがって多くのプッシュプル回路はAB級 動作をしていることになります。もちろんバイアスをどんどん深くしてやると 両方のトランジスタがA級動作する領域までもっていくことが出来ます。 それでもトランジスタ1つの回路にくらべると倍の出力は出るわけです。

この回路の優れているところは正負の電源をつかってやると対称性がよいために 出力電圧をを無負荷時にゼロにすることがたやすいことです。これはスピーカー を駆動するようなときには重要な性質です。


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2000-02-20