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バイアス回路の実際

トランジスターを正しい動作点で使うためにバイアスが必要な事を述べてきましたが 実際のところどう決めたら良いのかをちょっと触れておきます。 まず、基本は「常識的に与えれば動く」というものです。動作曲線状で作図 するのは本格的ですが実際的ではありません。では簡単なバイアス回路をみてみましょう

 
Figure: バイアス回路, 固定バイアス(左)、自己バイアス(中)、電流帰還バイアス(右)
\begin{figure}
\epsfxsize=0.8\textwidth
\centerline{\epsffile{bias.ps}}\end{figure}

左の固定バイアスは簡単です。hFEを100としてIC(コレクタ電流)を2mA、電源を10V と決めるとベース電流を0.02mAにすれば良いのですから(10V-0.6V)/0.02mA=470kΩのRbをつければ 良いと分かります。この回路はベース電流一定ですから温度によりhFEが変ると動作点が 変る不安定なものです。また多数の同回路を製作するとき、常にhFEを測定しなければ なりません。

そこで登場するのが自己バイアスです(図中)。この場合出力電流が増えると電圧降下で ベース電流が減るためにコレクタ電流が押さえられることになりhFEの変動に強い回路 になります。実際前と同じ条件でコレクタ抵抗Rcを2kΩとするとコレクタの電圧は6Vに なるので(6V-0.6V)/0.02mA=270kΩが求めるRbの値です。 この安定化は一種の負帰還によるものです(次章参照)。

最後が標準的なバイアス回路で今まで良く出てきたものです。この場合エミッタ抵抗自体 が負帰還をかけることになります。すなわち出力電流が増加するとエミッタ電圧があがり ベース電流が抑制されるわけです。バイパスコンデンサーCeのおかげで交流には 負帰還がかからずゲインが確保できます。前と同じ条件でReを1kΩとすると エミッタの電圧は2Vとなりベースは2.6Vにしてやればよい事になります。これは Rb1Rb2の比をいじれば良いことで簡単です。 Rb1+Rb2の値は ここの電流がベース電流の10 20倍になるように(ベースに流れ込む電流が無視できるように) 決めればよいのです。

以上はエミッタ接地回路の場合ですが、どんな形式でも hFEを適当に大きいものを使っていれば、ベース電流を無視して設計して 大体のところはオーケーです。


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2000-02-20