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媒質効果
中間エネルギースピン物理
- 零度陽子非弾性散乱の偏極移行測定によるスピン依存相互作用の研究(RCNP-E96)
- 零度陽子非弾性散乱の偏極移行測定と崩壊粒子測定による巨大共鳴の研究(RCNP-E108)
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超前方角度での陽子非弾性散乱の偏極移行量測定による原子核のスピン・アイソスピン励起モードの研究
(RCNP-E137)
入射エネルギーが 300MeV から 400MeV の陽子散乱は原子核中での平均自由行程が長く、反応はほとんど直接過程で起こるために核内のプローベとして非常に適している。我々は世界で唯一の陽子散乱のスピン偏極を零度まで測定可能な焦点面スピン分光器を開発し、原子核のスピン励起を相互作用と構造の両面から精密に調べている。特に、零度における全スピン偏極量はスピン反転と非反転の励起をほぼ完全に分離でき、種々のモードの共鳴を崩壊粒子の同時測定も併せることによって微視的に解明することを試みている。
荷電交換反応によるスピン・アイソスピン励起
- 零度における(3He,t)反応とガモフ・テラー遷移強度
(RCNP-E54,E113,E114,E132,R12,R16)
- 崩壊同時測定によるガモフ・テラー共鳴とスピンフリップ双極子共鳴の微視的構造の研究 (RCNP-E34,E53,E63,E65,E79,E80,E84,E97)
- (t,3He)反応によるスピン・アイソスピン励起(NSCL-94002,96018)
- (6Li,6He)反応によるスピン・アイソスピン励起(RCNP-E68)
原子核におけるアイソスピン反転励起は弱い相互作用のβ崩壊と密接に関連しており、例えばスピンもアイソスピンも反転し、軌道角運動量の移行が小さいガモフ・テラー遷移は零度の荷電交換反応によって良く調べる事ができる。特に(3He,t)反応のように反応前後が荷電粒子である反応を用いると検出効率やエネルギー分解能が高く、共鳴状態からの崩壊陽子や崩壊γ線との同時測定はその微視的構造の解明の有力な手段となる。また、標的核を選ぶことによって逆β崩壊を利用するニュートリノ検出器の較正を与えることもでき、最近ではβ+ 側の励起を調べるために2次ビームの triton を用いた (t,3He)反応の測定を行うなど精力的に実験を行っている。
核構造
- 11Be磁気モーメント測定
(Tandem V.D.G)
11Beは中性過剰核として興味がもたれている質量数が11の同重体の1つである。偏極した不安定核を生成する方法の1つとして10MeV程度の偏極重陽子をもちいた(d,p)反応の反跳核を用いる方法が知られている。10Be(これ自身が不安底核であるが)を標的とすることにより、偏極した11Beを生成し、磁気モーメント等を調べる計画である。偏極イオン源の開発と平行して、10Be(d,p)11Be反応で生成される11Beを測定した。これまでに11Beのβ崩壊を用いた寿命の測定やγ線のエネルギーの測定から11Beの生成は確認されている。現在は11Beの偏極の確認と放出陽子の直接測定を試みている。
- 軽い核の深部空孔状態からのクラスター崩壊の測定(RCNP-E81,E110)
原子核の高励起状態において巨大共鳴状態と並んでその微視的な構造が良く調べられていないものに深部空孔状態がある。これは殻構造における最も深い 1s 状態の核子が抜けた励起に対応し、我々は 12C,16O の(p,2p)反応によって 11B,15Nのs-hole 状態を励起し、崩壊に際して放出されるp,d,t,α粒子の分岐比を測定した。特に軽い核では空間の SU3 構造を反映して単純な統計的崩壊とは異なることが予言されており、これはまた、核内の核子がΛ粒子となって生成されるハイパー核の崩壊様式や水チェレンコフ装置での核子の消滅測定に対しても有益な知見を与えることになる。現在、データの解析中である。
- 数百MeVでの4Heからの弾性散乱(RCNP)
4Heは、中心部分に通常の飽和核密度より非常に高い密度を持つと予測されいる原子核である。 この高密度からなんらかの情報を得る目的で、我々はRCNPのリングサイクロトロンの300MeVの偏極陽子ビームを用いて4Heからの弾性散乱の実験をおこない、そのデータを相対論的インパルス近似を用いて微視的解析を行なっている。
巨大共鳴状態と非圧縮率
- α粒子による単極子巨大共鳴 GMR (Giant Monopole Resonance)の測定
(RCNP-E112)
- α粒子によるアイソスカラー型双極子巨大共鳴 ISGDR (Isoscalar Giant Dipole Resonance)の測定
(RCNP-E133)
原子核の巨大単極共鳴の測定から得られる圧縮率は原子核内の核子の振舞いを記述する方法の善し悪し判断する決め手といわれているが、各種のモデルや超新星爆発から要求される値には大きな食い違いを残したままである。それにはまず実験データを確立する必要がある。最近、零度近傍での非弾性散乱をきれいに測定する技術を確立したので詳細な測定が可能になった。変形した原子核での単極共鳴、あるいは巨大アイソスカーラー双極共鳴などを測定し、これまでと異なった方法で圧縮率を抽出し、実験データから圧縮率を求める過程の問題を検討している。
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φ中間子崩壊を用いた中間子質量に対する核物質効果の測定(KEK-PS
E325)
この実験は、原子核中での φ中間子の崩壊(K中間子対・電子対への崩壊比、および invariant mass 分布)を測定し、核物質中での中間子質量の変化を実験的に捕らえることによりカイラル対称性の部分的回復に関する知見を得ることを目的とする。
- 標的核多重破砕反応
(KEK-PS E337, E393 / NIRS-HIMAC)
高エネルギーハドロンが中重核に衝突した際、質量数が6より大きい低エネルギー複合粒子が放出される反応が起こる。この反応は標的核多重破砕反応と呼ばれ、比較的低励起状態では「普通物質」の世界での液滴に対応していた原子核が、内部励起を高くすることによって、最終的にバラバラな「気体」的な核子の集まりに変わる過程、原子核物質の液相ー気相相転移、に関する情報をもたらしてくれると期待されている。京大を中心としたMultiグループでは、高エネルギー加速器研究機構の陽子シンクロトロンや放射線医学総合研究所の重イオンシンクロトロンを使って標的核多重破砕反応を系統的に調べている。
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- 偏極イオン源 PIS (Polarized Ion
Source) 開発(Tandem V.D.G.)
タンデム加速器イオン源室には原子線型偏極負イオン源が設置されている。水素分子を解離して原子線とし、高磁場永久磁石により発生する六極磁場中で電子のスピン状態が選ばれる。続く弱磁場の高周波遷移で水素原子核に偏極が移され、さらに電子サイクロトロン共鳴(ECR)により原子を正イオンにし、Cs蒸気中を通して偏極した水素負イオンとしている。現在スピン方向の制御のためにウィーン フィルターの設置を準備している。
- 加速器質量分析法 AMS (Accelerator Mass Spectrometry)(Tandem V.D.G.)
タンデム加速器の最高ターミナル電圧が8MVと高いことを生かし、10Be、14C等の軽い元素の長半減期放射性同位体だけでなく、36Cl、59,63Ni、129I等の重い元素の超高感度測定を目指している。標準技術として14C測定を開発した。これまでに高い加速器透過効率の実現と12C、13C、14Cを逐次入射することにより、モダンの炭素よりは2桁程度低い14C/12C比の測定ができることを示した。より重い元素の測定に拡張するために、飛行時間差による同位体の識別と加速粒子から発生するX線測定による同重体の識別の開発を進めている。
- RCNP WSコースの開発 (RCNP)
核媒質効果、あるいはその応用としての核構造の研究あるいは巨大共鳴の研究に欠かせないのが、クリーンなビーム、エネルギー幅の非常に狭いビームである。これまでより一桁以上の性能向上を目指した新しいビームコースをRCNP, 阪大理と共同でRCNP に建設中である。2000年4月にはエネルギー分解能 0.007% のビームコースが完成予定である。
- 反跳粒子スペクトロメータ RPS (Recoiled Particle
Spectrometer)の開発 (RIKEN)
理研に建設中のRadio Isotope Beam Factory では核子あたり 400 MeV の不安定核ビームによる実験が可能になる。水素標的による散乱はちょうど400 MeV 陽子による不安定核からの散乱と同じになる。 そこで媒質効果の応用として散乱から不安定核の密度分布を抽出することを目指して、反跳粒子スペクトロメーターの開発を行なっている。
- SPring-8 レーザー電子光装置における検出器開発 (SPring-8)
8 GeV 電子ビームに短波長レーザー光を当てて逆コンプトン散乱に依ってマルチGeV の偏極γ線を発生させるレーザー電子光装置が SPring-8 に建設中である。1999年6月末に最初のレーザー電子光の発生に成功し、秋以降それを用いてのクォーク核物理の実験が始まる予定である。我々は、主として反応後放出される荷電粒子の軌道測定のための大型ドリフトチェンバーの開発を担当して性能試験を行っている。
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