京都大学ストレンジネス核物理研究グループ Strangeness

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グザイハイパー核の分光実験の物理データの取得を開始しました

ストレンジクォークを 2 つ含んだハイペロン・グザイ (Ξ、ssd クォークで構成される) を原子核に束縛した原子核の信号を世界最高感度で測定する実験 (J-PARC E70 実験) の物理データ取得を 2025 年 1~2月に開始しました。2025 年 4 月~5月に E70 実験の物理データ取得の完遂を目指しています。

グザイ-核子に働く力を調べる (Investigating Xi-Nucleon Interaction)

Ξ ハイパー核の質量やエネルギー準位は、Ξ と核子に働く基本的な相互作用の一種の「強いちから」の情報を豊富に含んでいます。

ストレンジクォークを含む粒子を地上で生成させるためには、高いエネルギーを持ち込んだ反応を必要とします。私たちは、光速の 96% のスピードをもつ K 中間子をビームとして利用することで、(K-,K+) 反応により原子核内部の核子を Ξ 粒子に変換し、その Ξ 粒子が原子核に束縛した特殊な原子核・Ξ ハイパー核の質量を精密に測定します。

Ξ ハイパー核のデータの観測例はわずか数例しかありません。私たちは、K1.8 ビームラインに新しく建設した磁気分光器 S-2S を用いることでグザイハイパー核の質量を精密に測定する実験を確立し、今後、様々な核種の発見と、精密測定によるグザイ-核子相互作用の性質探求を行っていきます。

実験施設 J-PARC

茨城県東海村に位置する大強度陽子加速器施設 (J-PARC) のハドロン実験施設のビームラインの一つ、K1.8 ビームラインにおいて遂行しています。30 ギガ電子ボルトにも加速された陽子を金標的へ照射し、π 中間子 や K 中間子等の粒子を生成させます。それらの粒子をビームライン分光器によって K1.8 ビームライン端末の実験エリアへ輸送します。その際、精緻な光学設計が施されているビームライン分光器と 2 段の静電セパレータを用いることで、粒子の運動量・種類を高精度化・高純度化します。J-PARC・K1.8 ビームラインは、ストレンジクォークを 1 つ含む中間子の一種である K 中間子を 1 秒間に 4 億個にも及ぶ大強度ビームとして供給することができる世界でも類を見ないビームラインです。

共同研究 (Collaboration Research)

本研究は、京都大学をはじめとして東北大学、東京大学、KEK (日本)、JAEA (日本)、IFNF (イタリア) 等のメンバーで構成される国際研究チームで遂行しています。京都大学からは、原田、江端、岩井、谷口の 4 名の大学院生が中心メンバーとして実験研究を推進しています。2025 年 2 月には、岩井が本 Ξ ハイパー核分光研究に関わる研究によって修士論文研究をまとめ、審査を合格しました。

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