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田村裕和 教授 (東北大学) によるセミナー (Seminar by H. Tamura from Tohoku University)

7月10日(木)、東北大学の田村裕和教授をお招きし、ハイパー核物理に関するご講演をいただきました。猛暑が続く京都においても、それに負けない熱気に包まれたセミナー形式の講演では、量子色力学(QCD)に基づく物質の成り立ちや層構造について、活発な議論が交わされました。
On Thursday, July 10, we had the honor of welcoming Professor Hirokazu Tamura from Tohoku University, who gave a lecture on hypernuclear physics. Despite the intense heat in Kyoto, the seminar-style lecture was filled with an equally intense enthusiasm. The audience enjoyed lively discussions on the structure and composition of matter based on quantum chromodynamics (QCD).
タイトル Title
ストレンジネスは核物理を変革するか
Can Strangeness Transform Nuclear Physics?
講師 Lecturer
田村 裕和 氏 (東北大大学院理学研究科)
H. Tamura (Graduate School of Physics, Tohoku University)
日時 Date and Time
7 月 10 日 (木) 15:00-16:30
15:00-16:30 on July 10, 2025
場所 Place
理学研究科5号館525号室(第4講義室)
Rm. 525, Graduate School of Science Bld. 5
概要 Abstract
核子自由度で扱う原子核物理と、クォーク自由度で議論するハドロン物理とは、いずれも強い相互作用が支配する量子多体系の物理でありながら、両者にかなり隔たりがあるように見える。これは、ハドロン(核子)の階層と原子核の階層とがよく「分離」していることの反映である。しかしその「分離」の理由は何だろうか。
クォークの閉じ込められた核子が、さらに互いに緩く束縛して原子核という高次構造を作ることは、QCDから簡単には出てこない不思議な現象である。この「原子核はなぜ存在するのか」を解明するには、核力をクォーク描像に立って(QCDにつながるように)理解する必要がある。また、巨大原子核である中性子星の中心部の高密度物質は未解明だが、ここでは、核子さらにハドロンの自由度だけでは記述できず、クォークの自由度が必要になっている可能性もある。
ストレンジネス核物理は、核力や核構造の物理にストレンジクォークをもつハイペロンを持ち込むことで、核子系核物理とハドロン物理とを橋渡しし、こうした核力や中性子星などの問題に答える手掛かりを与えてくれる。このような動機で進められているストレンジネス核物理研究の最近の動向について、J-PARCでの実験研究を中心にご紹介したい。