-高輝度γ線を用いたハドロン物理-

 高エネルギーの γ 線 (光子) を用いると

様々なハドロンを生成することができま

す。兵庫県西播磨にある放射光施設スプリ

ングエイトでは、エネルギー8 GeV の蓄積

電子に紫外レーザーを照射し逆コンプトン

散乱によって、 3 GeV の高輝度光子ビーム

を得ることができます。我々は、この光子

を用いて通常の自然界には存在しないストレンジクォークを含んだハドロン等

を生成し、その構造や相互作用、原子核物質中での性質の変化について研究し

ています。

 光子は内部構造を持たないため、ハドロン生成のメカニズムが理解しやすく

ハドロンの性質の研究に適しています。スプリングエイトでは輝度をさらに10

倍向上させたビームラインを建設中であり、大学院生を含め若い研究者の活躍

が期待されています。

 現在まで見つかっているハドロンは、3つのクォークかクォーク・反クォー

ク対で構成され、4つ以上のクォークで構成されるハドロンの存在は確証があ

りません。これはクォーク閉じ込めの問題とも関係し、ハドロン物理の大き

な問題の一つとなっています。我々は 2002年に反ストレンジクォークを1つ

含むペンタクォーク状態候補を報告し、その存否を確定すべく現在も研究を進

めています。また、メソン・バリオン分子状態候補 Λ(1405) バリオンの内部

構造の研究など、通常にはないエキゾチックなハドロンの研究を行っていま

す。

 ハドロンの質量や崩壊幅等の性質にはカイラル対称性と呼ばれる重要な対称

性が関わっていますが、原子核物質中ではこれらの性質が真空中に比べて変化

することが示唆されてきました。スプリングエイトでも、原子核物質中に

ω 中間子や φ中間子、 η'中間子等を生成し、その性質の変化を調べようとし

ています。