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簡単な応用:ラウドネススイッチの仕組みと基本的なフィルター回路

一般にラジカセを買うとラウドネススイッチというのがついています。 これは昔フレッシャーマンというひとが、音量と人間の耳の感度の関係を しらべ、音量が少ないと高音と低音がだんだん聞きにくくなるということを発見し ました。これを補正するための機構です。最近は低い方だけをブースト するのが流行っているみたいです。確に高音がキツイとつかれますから 音量を絞る意味が無くなります。この実現には可変抵抗器の回転角中央 から端子を取り出してこのような回路を作ります。


 
Figure: ラウドネス回路
\begin{figure}
\epsfxsize=0.4\textwidth
\centerline{\epsffile{boost.epsf}}\end{figure}

たとえばR3<<R2なら回転角中央以下では取り出された電圧は、 高周波でR3/(R3+R1) 低周波でR2/(R2+R1)になります。すなわちローブーストです。 周波数が1/CR3のところが ターンオーバーになります。さらに音量を上げていくとこの効果は どんどん小さくなります。 ここでの基本は2つのRC,RLの組み合わせで、必ず周波数フィルター として機能します。


 
Figure: 基本的なフィルター回路。左側がローパス、右側がハイパスフィルターとして働く
\begin{figure}
\epsfxsize=0.4\textwidth
\centerline{\epsffile{filter.ps}}\end{figure}

図の左上のLRの直列接続のRから出力を取り出すと 実効出力は $V=\frac{R}{\sqrt{R^2+(\omega L)^2}}V_0$となり周波数の低い成分通さないローパスフィルターとして働きます。逆にLから取 り出すと ハイパスフィルターになります。よくあるのはむしろRCの組み合わせで Cから取り出すとローパスフィルターで実効出力は $V=\frac{R}{\sqrt{R^2+\frac{1}{(\omega C)^2}}}V_0$です。ローパスフィルターのことを積分回路とも言います。逆にハイパスフィルター のことを微分回路といいます。このネーミングは正弦波の位相の回り方(進んだり、遅れたり する)を考えれば納得いくものですが、もっと直感的にはローパスフィルターは ある周波数以上のものを積分平均してなくしてしまうもので、電源の平滑コンデン サーがよい例です。ハイパスフィルターはある周波数以下では時間変動(微分)が小さいと してなくしてしまうものです。ステップ関数に対する応答を考えてみると分かり やすいかもしれません。ステップファンクションを入力したときの出力波形を 考えてみると微分積分の意味がはっきりします。 また、単なるコンデンサーでも直流を切ってしまうのでハイパスフィルタ だと考えるべきです。

さてここで電源のリップル率の問題を再検討。この場合は以下の図のようにコンデン サーに電気を蓄えておいてスイッチで負荷につないだ場合の過渡応答を考えればよいでしょう。

\begin{displaymath}\ v(t)=\frac{1}{C}\int{i(t)dt}=i(t)R_L
\end{displaymath}

ですから解は $ v(t)=v_o(\exp{-t/CR_L}$ です。このときCRLを時定数と呼びます。 tが小さいときは  v(t)=vo(1-t/CRL)です。 次の山が来るまで10msですから v0 = 15V $C=20000\mu F$$R=5\Omega$の時、時定数は100msで電圧は大体10% 降下することになります。実際ノートパソコンの携帯電源に要求される電源が15V,3 Aぐらいの性能です。この耐圧で $C=20000\mu F$のコンデンサーとはとてつもなく大き く携帯に不便です。さらに、10%のリップル率というのは電子機器のためには落第で す。そこで、定電圧回路を導入することになります。しかしながら実際のノートパソコン では、重要な電子回路は3V〜5Vの定電圧電源を内部に用意して駆動します。これにはほとんど 電流を必要としないわけでコンデンサーも小さな物で済むようにします。3Aも必要 なのはCDやDISKを回す立ち上げだけに必要なので、多少の電圧降下は無視する ことにして、あんまり大げさな携帯電源を必要としないようにしているようです。 実際3Aの定電圧電源を設計するのは結構大変です。これはトランジスタの動作を 学んでから振り返ることにします。


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2000-02-20