Hadron Spectroscopy

私たちの研究室では、エキゾチックなハドロン(1)を調べて、ハドロンの成り立ちに迫る研究を行っています。

この世の中の物質を作っているもっとも基本的な粒子は、クォークという素粒子であると考えられています。地球上で自然に存在するクォークはたった2種類です。しかし、実際には全部で6種類もあります。3番目のクォークは、偶然に降って来た宇宙線によって発見されました。このクォークは、それまでに知られていなかった性質を持つことから、“奇妙な”という意味のストレンジクォークと名付けられました。

今日では、最先端の加速器によって全てのクォークを作り出すことが出来ます。これらのクォーク、特にストレンジクォークによって作られるハドロンを加速器でたくさん作り、どのようにクォークからハドロンが出来るのか、という物質創成の第一歩に迫ります。

ストレンジバリオンーΞ、Ω粒子

大強度陽子加速器施設 J-PARCでは、(反)ストレンジクォークを1つ含むK中間子を大強度のビームとして用いることが出来ます。このような施設は世界でここにしかありません。このK中間子ビームを使うと、ストレンジクォークを2つ、あるいは3つを含むような実に珍しい粒子を作ることが出来ます。

“おなじみの”軽いクォークたちは、強い相互作用(2)の担い手です。ものが壊れずにいられるのは、この強い力がはたらくからなのです。しかし強すぎるために、ハドロンを壊してばらばらのクォークにするには途方もないエネルギーが必要になります。このような系にストレンジクォークを入れると、どうなるでしょうか。ストレンジクォークは軽いクォークに比べると数倍重いため、比較的相互作用が弱くなるという性質があります。

調べるのがとても大変な強い相互作用の世界を、あえて弱い相互作用をするものを埋め込むことで、結びつき方(束縛の仕方)に反映される特徴を調べ、ハドロンの中でクォークがどのように結びついているか、もう少し専門的に言うと、ハドロンを作る真の自由度は何か、ということを調べようとしています。

エキゾチックなハドロン

これまでに知られているハドロンは、クォークが2つ結びついた中間子(メソン)や、クォーク3体のバリオンのみでした。しかし、クォークが4つ以上結びついた粒子も、理論的にはあってもおかしくありません。クォーク4体のハドロンをテトラクォーク、5体のものをペンタクォークといいます。6体のものはダイバリオン(2つのバリオン)と呼んだりもします。

このような特殊なハドロンの例が、最近いくつも見つかっています。当研究室でも、大強度のπ中間子ビームを用いたペンタクォーク探索実験を行いました(J-PARC E19実験)。残念ながら発見できませんでしたが、現在でもSPring-8 LEPS2実験で探索が行われています。(リンク)

  1. ハドロン:
    クォークと反クォークで作られる中間子(メソン)、クォーク3つで作られるバリオン(例:陽子や中性子など)の総称。
  2. 強い相互作用:
    世の中には4種類の力があります。強い力、電磁気力、弱い力、重力です。このうち最も強いのが“強い力”です。力は、力を媒介する粒子によって伝えられます。例えば電磁気力は、電荷をもつ2つの粒子の間に光子がやりとりされることで作用します。この作用のことを相互作用と言います。強い相互作用はクォーク同士に働きます。これを媒介するのがグルーオン(糊粒子)です。これを記述するのが量子色力学(Quantum Chromodymanics: QCD)です。
  • スペクトロメータ(測定器)のデザイン

  • 軽いクォークでできたバリオン

  • 重いクォーク2つが入ったバリオン

  • ペンタクォーク